ほん屁ん

10/13
前へ
/14ページ
次へ
 ※ ※ ※ 「昨日のおなら、お前じゃないだろ」  翌日の休み時間、移動教室のため廊下を歩いている途中で、堀北が切り出した。 「うっ、まあバレるよな」  試験中の僕の席は堀北の真後ろ。方向からして、あのおならが僕のものではないのが彼にバレるのは当然のことだ。 「あき……西宮さんが、ピンチだったから」 「うーん、そこなんだけどよ」 「なに?」  いつになく歯切れの悪い堀北。  僕が問いかけると、気まずそうに視線をそらして。   「いや、なんでもない」 「なんだよそれ」 「大したことじゃないから。忘れてくれ」 「そこまで言ったなら言えよ。気になる」 「うーん、わかった」  人の七倍の嗅覚を持つという堀北が、どこか申し訳なさそうな口調でこう続けた。 「昨日のおならの匂い、東条さんの席から漂ってたんだよ。西宮さんじゃなくて」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加