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「残念だったな。今日もストーカー成功したのに」
「ストーカー言うな」
ストーカーじゃねえよ、と否定しきれる自信はない。
「もうさ、そんな回りくどいことしてないで、早く告っちゃえば?」
「そんなの、できたらとっくにしてるって」
「側から見たらお前ら若干いい感じだぜ」
「若干じゃダメなんだよ!」
「でも実際、早いとこ動いた方がいいと思うけどな。うだうだしてるうちに他の男に取られることだって充分あり得るだろ」
「話してたら、嫌でもわかるんだ。演劇一筋の秋穂ちゃんは、僕のことなんか必要としてない」
「……あのさ」
口調にたっぷり切なさを滲ませた僕に対し、堀北はじとっとした目を向けてこう言う。
「いい加減、俺と恋バナする時だけ『秋穂ちゃん』って呼ぶのやめろ。キモいから」
「我が友よ、覚えておくといい。率直な物言いは、時に人の心を残酷に抉るってこと」
「ならお前は、『自業自得』って四字熟語を覚えることだな」
一学期期末テスト最終日、心に無数の切り傷を負いながら、僕は堀北とともに校舎を歩く。冷房のついていない廊下はむわっと暑かった。
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