ほん屁ん

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 ※ ※ ※  ——さっきのお礼に、デザート買ってあげる。  おなら事件から数時間たった昼休み、西宮さんはそう言って僕を中庭の売店に連れ出した。  二人並んで教室を後にし、廊下を歩いて校舎の外へ出る。  全身が汗だくなのは、照りつける夏の日差しだけのせいではない気がした。 「さっきはほんとに、ありがとね」  頰を桃色に染めてはにかむ西宮さんに、「別に、大したことはしてないよ」と平静を装って返す。 「あんなことになっちゃって、わたし、西宮くんにドン引きされたんじゃないかって思ったよ」  ざわざわと何十人もの話し声が響く昼休みの中庭。  だけど僕の耳には、隣の西宮さんの声だけが鮮やかに響く。 「ドン引きだなんて、そんな」 「やっぱりやさしいよね、西宮くん。そういうとこ、好きだよ」  何度も言われたそのフレーズをまた耳にして。  今までにないほど強烈な感情が、ぽろっと漏れた。 「……そういうとこ、だけかな」  立ち止まり、西村さんに体を向ける。 「え」    西宮さんが、驚いた声音とともに足を止めた。  いつもは恥ずかしくて直視できないその瞳に、まっすぐな気持ちを届ける。 「僕は、西宮さんの全部が好き」
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