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でも、と柳内の声が低くなる。
『その前に、手紙をよこしてもらわないことにはね。ハッタリの可能性もあるが、あれが世に出れば、私も佐久間先生も、非常にまずいことになるから』
二人の男たちは、私のバッグを漁っていたが、やがてかぶりを振った。
「手紙なんて、無いぞ?」
「この封筒は……、ああ、違うな」
ご苦労様、と私は内心せせら笑った。そんな手紙は存在しない以上、持って来れるわけが無い。ちなみに辻村からもらった手紙は、念のため京亮に預けてある。
そこへ、私の車を調べていた三人目の男が戻って来た。
「車内にもありません!」
「しらみつぶしに捜したのか?」
その会話は、柳内にも聞こえたようだった。
『おい、持って来なかったのか? 騙したのか?』
「政治家は、嘘をつく生物なんでしょう? ついさっき、ご自身で仰ったじゃないですか」
私はこらえきれず、クスッと笑った。
「『騙される方が悪い』、そうでしたよね?」
チッと、舌打ちする気配がした。
「もういい。代われ!」
男の一人が、スマホをひったくる。柳内は、相当苛立っているようだった。男に指示している声が、漏れ聞こえてくる。『徹底的に捜せ』『女と車は始末しろ』と聞こえた。
「……はい、はい。承知しました……」
電話を切った男に向かって、私は軽くウィンクした。スカートの脚を組み替える。
「何なら、体中調べていただいても結構ですけど?」
男が、思わず生唾を飲んだのがわかった。
「な、なあ。どうせ殺るんなら、その前に……」
「馬鹿」
もう一人は、仲間を叱りつけた。
「手紙を捜すのが先だろうが! そうしないと、俺たちまで……」
その時、不意に鋭い男の声が響いた。
「そこの車! 何やってる!」
男たちが、ぎょっとした様子で背後を振り返る。夜道に、赤色灯が光っていた。パトカーだ。
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