童貞心理学 大学准教授ですが教え子に迫られまして

1. 桜花BL大学！

日本で唯一のBLクリエイターの人材育成をすすめる大学が出来たのは２０＊＊年のことだった。
漫画や小説、アニメやドラマなどBLは凄まじい勢いで世間に広く人気となっている。それに関わるクリエイター志望の若者も以前より遥かに増えた。そのニーズを踏まえてこの『桜花BL大学』は設立されたのだ。
ちなみに大学名にある桜花はこの大学を設立した現在の学園長で、伝説のBL作家である桜花まりえから取られている。彼女の小説は幅広い年代の読者層から絶大な人気があり、コミカライズはもちろん、いろんな作品がアニメ化、映像化されている。ドラマは人気のアイドルや俳優を起用し、BLに触れてきたことの無い若者たちがドラマから入ってすっかりBLにもはまると言う好循環を生み出していた。

『桜花BL大学』の学部は主に五つ。『小説科』『漫画科』『音声科』『編集科』『グローバル学科』に分かれている生徒の男女比率は六割女性で四割は男性。BLの明日を担う若者たちが集い、学んでいるのだ。

そんな『桜花BL大学』で准教授として勤務しているのが俺、塩谷道成(しおやみちなり)。主に心理学の授業を受け持っている。どんな心理学かって？BL作品を作るにあたって少しばかり分かりにくいような心理を紐解いていく授業だ。
例えば、今から行う授業は『童貞心理学』。男性であれば分かりやすい心理でも女性では分かりにくい。BL作品でリアルに表現できるよう教えるのだ。そうすれば作品にもっと深みが出るというもの。
「塩谷くん、次授業あるんだったよねえ？」
研究室の奥から、湯浅教授の声がして、俺は思わず腕時計で時間を確かめた。もうこんな時間だ。教室に行かなければ。
「ありがとうございます、行ってきます」
「はあい。またねえ」