13.塩谷、悩む!

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13.塩谷、悩む!

俺がスプーンを持ったまま固まっていると、さらに土井がけしかけてくる。 「藤野くん、しおっぺの話してるとき、めちゃくちゃ嬉しそうなのよ。そりゃ恋愛の話は私達の妄想かもしれないけれど、あの子がしおっぺを大好きなのは現実なの。だから今、ギスギスしてる二人を見るのがつらいの、私達。ねぇ、さっち」 さっちと呼ばれた佐々木は恐ろしい勢いで首を縦に振る。 「先生、お願い。藤野くんのこと、嫌わないで」 その言葉に胸がチクリと痛くなった。 「…嫌ってなんか、ないよ」 「本当に?よかった」 土井と佐々木はホッとしたような笑顔を見せる。やれやれ… 「まあ、俺も大人げなかったな」 「何か言った?しおっぺ?」 「んー、何でもないよ。お前らの友情に脱帽だな」 そう俺が言うと二人はさらに大笑いした。 家に帰って、寝る前にぼんやりと考える。藤野とあまり話をしなくなって、寂しいと思ったのは否定できない。好きな作家の話をしながら目を輝かしていた藤野。子犬のように懐いてくれた藤野を思い出すとチクチク胸が痛む。そして体に触れてきた彼の手を思い出す。熱を持ったキス、体を舐め回す舌。二人で一緒に握った彼のモノ… ずくん、と下半身が疼いて手を伸ばしあの日のようにそれを扱く。 「う…んっ…」 一人ではもう、もの足らない。藤野が触れなければ、あの気持ちよさを知らなければこんなに切なくならないのに。 「んっ、ん…ッ…藤野っ…」 もう一度触れてほしい。 **** その日は朝から大雨だった。公共交通機関の遅れが激しく、一限目の生徒の出席率は低かった。 「今週は『素人童貞』について」 いつもは教室の席は八割くらい埋まるのだが、今日は四割くらいしか埋まっていない。そして最前列に座っているはずのいつもの二人もいない。 仲良く遅刻かな、と思いながらもつい二人を気にしてしまう自分に嫌気がさしてきた。 結局、俺はどうしたいんだろう。
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