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15.ばんざい、藤野!
一瞬間があったのち、藤野が勢いよく抱きついてきた。ものすごい力で体を締め付ける。
そして真っ赤になりながら、笑顔を見せた。
「あったりまえじゃん!僕、先生しかみてないよ?何言ってんのさあ」
へっ、と驚いて畑中を見ると、彼はまだ俺を睨んでいたがやがてため息をついて、お手上げのポーズをした。
その日の夜。俺は初めて自分の家に藤野を招いた。
「お邪魔しまーす!わ、先生の匂いだ」
「やめろよ生々しい」
キョロキョロしながら、ソファに座る藤野。俺はカフェオレをいれて、ローテーブルに置いた。
「ね、先生。どうして今日は家呼んでくれたの」
藤野がニヤニヤしながら聞いてくる。分かってるくせに、ほんとに性悪だ。年下攻めがグイグイ来られると本当に焦る。こちらにだってプライドがあるんだよ!
「お前、どうして俺にちょっかい出してきたんだ?」
「先生が好きだからに決まってんじゃん」
「す、好きとか、なんで」
「んー。初めは好奇心だったんだよね。童貞心理学を教える准教授はどんな人なのかなってさあ。そしたら背が高くて優しそうな人じゃん?きっと童貞じゃないんだろうなって思ってだけど授業聞いているうちに分かったんだよね、まだこの人童貞なんだって」
藤野は俺との距離をジリジリと縮めていく。
「しかも先生、僕の好みの顔だからさあ。こんな人がまだ童貞なら僕がいかなきゃって、思ったわけ。この年まで童貞拗らせてるなら『正統法』な攻め方だとなかなか貫通しな…、想いは届きそうにないから、先に手を出そうと…」
熱気をもって語るので、恥ずかしくてたまらない。耳も頬も暑くてたまらない。
「俺が男は無理ってなると思わなかったのか?」
そう言うと藤野はえっ、と驚く。
「先生、もしかしてノンケなの?あんなやらしいお尻なのに?」
「…」
なんと藤野は俺が元々ゲイだと思っていたらしい。やらしい尻ってなんだよ。
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