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2.童貞心理学!
俺が支える湯浅教授はBL研究の第一人者。日本の歴史にも精通していて、男色歴史についての研究をしている。普段からおっとりしていて生徒からも好かれている教授だ。ちなみに桜花学園長が奥さんで、かなり尻に敷かれているという噂だ。
今日の第二時限は本館一階の104号室か。研究室から遠いんだよなあ…
「しおっぺ、早く早く!もう始まっちゃうよ」
104号室のドアから顔を覗かせて手招きしている女子学生が二人。いつも何かと俺に懐いている土井と佐々木だ。あだ名のしおっぺはやめてって言ってるのになあ。
なんとか部屋に入ると生徒たちはもう着席していて、雑談していた。三十人くらい入れるこの104号室。俺の心理学を受講するのは女子生徒がほとんど。そりゃあまあ、女性が分からない心理学の勉強だしな。
「ああごめん、遅くなりました」
教壇に俺が立つと、雑談していた生徒達は途端に静かになり俺の方を向いた。
「じゃあ、前回の続きな。ええとテキスト十八ページから。『憧れの筆おろし』について」
そう言うときゃあと女子生徒がざわめいた。入学して半年以上経過したとはいえ、一年生にはまだまだ刺激的なのだろう。授業を進めながら俺はふと気がついた。左側の前列から三列目に彼がいることを。
女子生徒がほとんどの中に混じって二、三人男子学生が受講している。そして俺が見たのは毎回必ず前方の席を陣取り熱心に聞いている生徒、藤野航だ。
ナチュラルマッシュの黒髪に、メガネをかけた藤野はいかにも真面目な生徒で他の授業でも熱心らしい。BL小説作家を目指しているらしいと他の先生が言っていたっけ。
童貞心理学なんて受講しなくともお前童貞だろ?なんて思っているのは内緒だ。
生徒に対してそんなことを思っているなんてバレたら、湯浅教授…というか桜花学園長に大目玉食らってしまう。
俺は頭を振り、授業を進めていった。
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