9.NTRじゃありません!

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9.NTRじゃありません!

藤野の幼馴染の生徒は畑中祐介という名前だった。藤野より一つ年下だが、『桜花BL大学』は配当年次での受講システムというものがないので、どの学年でも自由に受講を選択できる。単位が取れればいいといった感じなのだ。そのため学年の違う藤野と畑中が隣同士で受講することが可能だ。 小柄な藤野に対して畠中はかなり体格が良かった。身長も高いが高校時代にラグビーをしていたらしく、この『桜花BL大学』に通う男子生徒の中では一際目立っている。フェードスタイルの髪型でサイドを高く刈り上げ、いかにもなスポーツマンタイプだ。 この二人が並んで歩いていると二十センチくらいの身長差がありそれがまた萌えるのだと女子生徒たちが休憩中に騒いでいるのを聞いたことがある。 「NTRは苦手なんだけど、畑中くんならアリかも…」 「いっそ三人っていうのはどうかしら。この場合、藤野くんが総受け?」 「えー、塩谷先生でしょ」 恐ろしい会話に思わず耳を塞いでしまった。 それから数ヶ月。藤野はあまり俺に構うことがなくなっていた。廊下ですれ違うこともあるのだが大抵、隣に畑中がいる。それでも藤野は俺を見つけると手を振ってきたりしているので俺に興味がなくなったわけでは無いらしい。って、興味がなくなってくれた方がいいのだけど。 「最近、藤野くん見かけないねえ」 湯浅教授は苺大福を頬張りながら俺にそう言ってきた。三時限目が終わり、研究室では少し早いおやつタイムだ。多い時には週三回くらい来ていた間隔が週一回となりやがて研究室に来なくなったことに教授は気がついたのだろう。 「そうですね」 「なんだか寂しくなっちゃったねえ。相談事はもう済んだのかな?」 「…多分、彼の中で解決したんじゃ無いですか」 湯呑みに入れた緑茶をぐいと飲むと、意外に熱くて咽せそうになった。
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