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出勤前。
少し早い晩ご飯を食べている樹に、汐里は明日の献立は何がいいか尋ねた。
「何でもいいよ。オレ特に好き嫌い無いし」
「う~ん、何がいいかなぁ~?スタミナのつくもの食べて欲しいし」
「しおりんの料理のレパートリー、すごいたくさんあるんだな」
樹は野菜炒めに入れられた最後の肉のかけらを口へ入れた。
「うん!まだまだあるよ!だから迷ってるのに~!」
一緒に住むようになり、二ヶ月ほど経った頃。
汐里との生活にもだんだん馴染みつつあった。
とても自然で、とても楽しい毎日だと思える。
そんな汐里は手帳に何を食べたか記録しており、ページを見ながらメニューを考えていたのだった。
「料理美味しい。オレ太るかも~」
「えっ嘘!カロリー高いのばっかり作ってた!?樹くんの格好良さが損なわれちゃったらどうしよう~!」
ムンクの叫びのように本気で汐里が困った顔をするので、樹は苦笑いしながら否定した。
「美味しすぎて幸せってことだよ」
「えっ!?も、もう一回言って?!」
「……何回も言うの照れるんだけど。美味しいよ」
「きゃーっ!!」
真っ赤な顔の汐里を前にくっくっと笑っていると、不意に樹のスマホが鳴った。
何気なく手に取り確認して、樹はまた元の場所にそっとスマホを置いた。
「友達から。飲み会のお誘いだった」
「そうなんだ」
急にそわそわし始めた汐里は、何か言いたげで、しかし黙ったままだ。
樹はそんな汐里の顔を見て何かピンときたのか、右の眉毛を上げたあと言った。
「男ばっかり、オレを入れて三人。学生の時につるんでたメンバー」
にっと笑っている樹に、汐里はどこかホッとした表情を見せた。
「あ、そ、そっか。えへへ、女の人がいるのかなって思っちゃって焦っちゃった」
汐里は顔に出るので分かりやすい。
心配をしているなら、始めに打ち消しておいてやりたい。
樹は安心した様子の汐里を見て、コーンスープを飲み干した。
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