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「痛ぇな!何すんだよ!オレはホンモノだ!」
樹は少しムッとした顔を見せた。
「は、ハタチって、学生か?働いてんの?」
「働いてるよ。接客業してる」
「それ何?同業者なわけ?!どこで出逢ったんだよ、そんな若い子と!」
昇太は興味津々で鼻息荒く質問を続けてくる。
「同業者じゃなくて、ちょっとしたトラブルで助けてやったのがきっかけ」
「えええーっ!?」
いちいち反応が大袈裟である。
「行き倒れてたから」
「そんな子、道に落ちてねーだろ!普通」
「別に、落ちてたわけじゃないし!」
興奮気味に質問は続いていく。
昇太が叫んだ。
「どんな子なんだよ、オレも困ってる女の子助けたい!写真持ってないのか?」
「写真かぁ」
樹は、言われてスマホを取り出し指先で操作し始めて、そしてやめた。
「え?なんで見せてくれないんだよ」
樹のスマホの中に保存してある『しおりんフォルダ』の写真は、彼女が樹宛に自撮りして送ってきたものがほとんどだ。
ということは、樹のためだけに撮ってくれた樹専用の写真ということになる。
最高に可愛い瞬間を収めようと頑張ったものに違いない。
それを、易々と他人に見せて良いものだろうか。
可愛い写真に違いないので見せたいのはやまやまなのだが。
そこまでを数秒の間に樹は考え、スマホはポケットに再び戻されてしまったのだった。
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