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「そういえば、結婚はいつすんの?」
「一応六月の予定で進めてるんだ」
忠士の問いに、樹が答えた。
「おー!それじゃああと二ヶ月だな。ってかえらく急だな?」
「あっ!分かったぞ!できちゃったんだろ?!それで責任取ってそんな若い子と結婚するんだ!行き倒れてた女の子を言葉巧みに無理矢理襲うなんて、お前ってヤツは!」
エビフライを取り落としそうになりながら唇をわなわな震わせて言う昇太に対し、樹は咳き込んで少し声を荒げた。
「ちげーよ!人聞きの悪いこと言うな!オレを何だと思ってんだ!」
「でも――」
「でももへったくれもねぇよ!ちゃんと清い交際を経てだなぁ」
昇太と忠士はニヤニヤしながら樹を見ている。
「清い交際って、清くないだろ?実際」
「一緒に住んでるんだしなぁ」
「……お前ら覚えてろよ」
箸を持つ手をわなわなさせていた樹は、餃子を口に放り込んでもぐもぐさせて飲み込んだ。
「結婚することになったのはもうちょっと前で、六月なのはジューンブライドに憧れてるんだって。せっかくだし叶えてやりたいだろ?」
先ほどからずっと何かにつけて顔をポッと赤くする樹を見ていると楽しいことに昇太と忠士は気が付いた。
今までにない年下の彼女との結婚。
よっぽど好きなんだなということが伝わってくる。
「樹。子供はいいぞ~、大変だけどな。可愛い」
三人の中で唯一父親である忠士が、顔をゆるゆるにして言う。
その姿に、樹もふっと笑みを浮かべた。
「うん、可愛いばっかじゃなさそうだけどさ。家族で旅行とか楽しいだろうなって思ってるんだ」
「何かあれば、相談してくれたらいいよ。オレで分かることなら」
「ありがとう、助かる」
既婚者であり先輩パパでもある忠士の言葉に、樹は素直に礼を言った。
「なんかさ、樹が結婚することだけで驚きなのに、子供の話までするなんて、オレ夢でも見てるンじゃないの?」
昇太がもしゃもしゃとアスパラの肉巻きを食べながら言った。
隣で忠士がうんうん頷いている。
「ますますどんな彼女なのか興味あるわ。絶対に結婚式には呼べよ」
「うん、優先順位一番で樹の方に行くから」
はははと照れ笑いをして、樹は礼を言った。
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