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バトルスタート
グォーングォーンと怪獣のいびきのような低い音が聴こえる。
どこからだ、と思った時に真っ暗闇の中央部、横一閃。光の分割線が差し込まれそれが徐々に視界の上下に拡がった時に、自分が置かれた状況を理解する。
自分の真横に人間。目の前にも人間、人間、人間。さらに奥の方にも人間、人間、人間、人間、人間、人間、人間。満員電車みたいに人間がひしめき合って座っている。
だが満員電車ではない証拠にここにいる誰もが軍服を着用し、胸にも腰にも手足にもパウチのいっぱいついたベルトのような装備品が巻き付いている。
軍用輸送機のなかで兵員が乗り合うスペースのなかだと分かった。
これから戦地となる無人島の真上を飛んでおり、定刻になればハッチが開きそこからパラシュートへ島まで降り立つ。
このなかにいる物騒な服装のひとたちは、これから竜星と闘うことになる九十九人のプレイヤーだ。
たいていが今の自分のような軍服だが、中にはコスプレイベントにでも出ていそうな派手な格好をしたひとたちもいた。背中に翼を生やした悪魔のような格好のプレイヤーや全身をまがまがしい漆黒の鎧で固めた竜騎士のようなプレイヤーなども少なくない。
竜星はそのコスプレめいたコスチューム軍団のなかでも、比較的大人しめな自己主張の頭にカボチャを乗っけたカジュアルな服装のプレイヤーに注目した。
ハロウィンのジャックオーランタンみたいに目と口を切り抜かれたカボチャを頭にかぶり、ダウンジャケットを着たそのプレイヤーに、なぜだか心を奪われたのだ。
彼らを倒し、無人島で最後のひとりになるまで闘いは続くのだ。
そうか。ついに来たのか、このバーチャルリアリティーが生み出した閉ざされた空間のなかで行われる新世代サバイバルゲーム“フォースキャリバー”の世界に、と久我竜星は感じた。
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