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「くそ! 当たらねえ! このヘボ銃が!」と思い通りに仕留められずにイライラを募らせているらしかった。
こちらも武器を手にしているのだから迎え討てばいいのに竜星はすっかり襲撃されている事実と銃声にビビッて逃げ出していた。
逃げ出すと銃声と一緒に敵も追いかけて来た。
逃がさないぞとばかりに銃弾が竜星を追いかけ回す。ライフルとは別の大きな銃声がしたが構わず竜星は逃げていた。
「ああっ!」
竜星を追っていたプレイヤーは、横入りした別のプレイヤーに撃たれたのだ。
バトルショットガンを持ったプレイヤーはさらに近づいて、竜星を狙っていたプレイヤーに銃を連発した。
ドン、ドン、と音が鳴り響くたびに身体のどこかに穴が開き、やがて膝を付いたその身体は頭上からやってきた球体めいた物体が倒れた身体に青い光を照射して機械の中に閉じ込めた。
さながらコンパクトサイズの移動式棺桶といった趣で、倒されたプレイヤーのアバターを回収するのだ。
「ライフルか。おまけに回復用のスプレーも持っているのか、こいつはいただきだぜ!」
倒した者の装備を頂戴しようと駆け寄ったところで、バンッと別の銃声が響いた。
正確なヘッドショットで射抜かれて、ショットガンを持ったプレイヤーはまるごと頭が消えてなくなっていた。
どしゃっと前のめりに倒れた身体は、先ほど己が倒した相手と同じように“棺桶”がやってきて敗者を回収した。
後ろからやってきたボルトアクションスナイパーライフルを携えたプレイヤーは、今しがた倒した相手の持ち物だったバトルショットガンを取り上げ、彼女が欲しがった回復用スプレーも自分のものとして頂戴した。
このプレイヤーは竜星も輸送機の中で左隣にいたが、よっちゃんとの会話に集中して気付かなかったのだ。
プレイヤーネームは“シモダヘイへ”と登録されており、このゲームを何度も経験している熟練のプレイヤーで、特にスナイパーライフル系の武器の扱いを得意とする冷静沈着なシャープシューターだ。
彼女は虎視眈々と遠くから戦況をスコープ越しで見極め、確実に勝利を収める策を考えながら戦地を走っているタイプだ。
白い肌がまぶしいスラヴ系の端正な顔を、竜星が捜索した住宅のほうへ向けた。自動車が目に付いたのでそちらへ足を運ぶと乗り込んで、走り出した。
すでにこの島で闘うプレイヤーの残り人数は、九十四人となった。
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