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麗華さんと会うのは今日で5回目だ。
僕の結婚相手の条件にぴったりな上にかなりの美人だ。
そろそろ決めよう、僕の気持ちは決まっている。
「麗華さん、そろそろどうですか?子供の事もありますし」
「ええ、そうですね。私も来年で40歳ですし早い方が体的にもいいですもんね。それに卓也さん真面目だし、優しいいいお母さんになりそうだわ」
彼女はとても嬉しそうに笑い、それからすぐ僕たちは子供をつくる事にした。
そして1ヶ月も経たないうちに、見事麗華さんは妊娠した。
初めて麗華さんに会った日、彼女は自分の遺伝子を残してみたくなったと言った。
今までは全く考えもしなかった事だけど大体の事は上手くやってきた人生を振り返ってみて、せっかく神秘的な機能が備わった女性の体を持って産まれたのに出産を経験しないのはなんだか損をしている気がすると言う。
損得で考えるあたりが弁護士らしいというか麗華さんらしくもある。
そして子育てにはどうしても魅力を感じられないとも言った。
麗華さんは大手弁護士事務所で毎日忙しく働き、たくさんの部下を従えている。今まで何人も大きな子供の教育を十分にしてきているからなんなら経験済みよ、と笑って言った。
そして僕を相手に選んだ理由は3つ。
28歳という年齢、お母さんという職業、秀でた才能がないという事。
何かと1番になる事が多かった麗華さんは「普通」に憧れた事もあったわ!と真面目な顔で話してくれた。若干けなされた感もあるがとても正直で嫌いじゃないし僕にとっても麗華さんは好都合だった。
僕には到底出来ない出産だけをしてくれる人をずっと探していたからだ。
出産後の子育てには一切口出しをせず、一生生活には困らない財力を持ち、ある程度の地位もある。しかも誰もが認める美貌。性格も悪くはない。
子供を立派に育てるにはお金がかかるし育つ環境はとても大切だ。外見だって良いことに越した事はない。産まれてくる子供の半分以上を優秀な麗華さんのDNAが占め、残りは僕に似て五体満足な健康な子供が産まれてくれればそれでいい。
小さい頃からずっとおかしいと思ってきた。
どうして男には子供が産めないのかと。
幼い頃、男女で体の作りが違うことを知って驚いた。何故2つに分けたのかと疑問に思った。そして僕が男の方に振り分けられた事にショックを受け神様を恨んだ。
でも今は違う。
今までは偽物だったけれど僕は本物になる。
夢にまで見た本当のお母さんになる。
子を産む壮絶な痛みを知らなくても、大きくなっていくお腹の重みを実感出来なくても、自分の血を分けた自分に似ているだろう赤ん坊をこの手で1番に抱くことが出来る。そして僕がこの小さな命を育て上げていくんだ。
血を分けた子供に「お母さん」と呼ばれる幸福が待ち遠しくてたまらない。
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