執心

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「負の契約を望む者は、生贄を捧げるがために、自然界の掟に乱れを生じさせる。だがその乱れた空気の中心にいる契約希望者にとっては、それが格好の自己主張となる。だからこそインはその者に目を引かれ、すぐに多大なるエネルギーを与えることができる。生贄を使わない正の契約を望む神術師達が霊力を身につけるのも、言うなれば自己主張の手段だ。自己主張が強ければ強いほど、インから(くだ)る力が大きくなる。そして一度インと通じた者は、契約を得た術に対してのみだが、望めば何度でも力を与えてもらえるんだ。……まあ、つまり人間に本当にその力が根付くのではなく、一度降されては一度で尽き果て、また必要があれば再び力を降してもらう仕組みということだがな……」  ディーチェは呆然としていた。  これまでの認識を一気に覆され、新事実を一時(いちどき)に打ち込まれて九歳の頭は飽和状態になっていた。
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