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ジークはオウラに向き直った。
格子を摑んでいた指が滑り落ちるように外れ、どこかまだ気怠げな立ち姿を見せながらも、その瞳はオウラの私考を打ち切るように強い視線を放っていた。
「……饒舌だな……。姿鬼の頭領は姿鬼化した人間とそうでない者を繋ぐために全て存在するという見解があるが、その見透かしているような眼と語り口が共通しているためにそう言われるのかも知れない……」
低い声の怒りを含んだような底深い響きにオウラは軽く頬を歪ませる。
「私の存在理由か。私には姿鬼と化す以前の記憶もなければ、何のために今があるのかの解も持たないが、その見方は否定するものではないと言っておこうか」
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