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慕った大人に適当に調子を合わせられた後に突如として突き放され、大人と子供との差を見せつけられた時の衝撃に似た感情が、ディーチェの胸の裡に湧き上がったのである。
「そんな顔をするな。それより、そろそろ家に帰った方がいいんじゃないのか?」
オウラの声に少年はキッと反抗的な眼光を放った。
「あんな家、関係ないよ!つまらないこと言わないで!」
「……」
オウラは美しい唇を結んで、むきになった少年の顔を眺める。
「な……、何……?」
「……」
オウラは答えない。ディーチェの瞳に鏃の如き眼差しを射掛けたまま黙り込んでいる。
ディーチェは顔を歪めた。
「何が、言いたいの……?」
「……」
「ねえ」
「……」
「ねぇってば」
「……」
オウラは右の口端を微かに上げて笑った。
「いや。何でもない。お前の真意が見たかった」
「え……?」
「いいからもう帰れ。今日は十分だろう」
「……」
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