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禁忌
夜が更けてゆく。
深まる闇に侵食され、黄色よりも暗く黒ずんだ電光が鉄格子に触れている。
美貌の姿鬼はその灯すら届かぬ闇昧の奥で、僅かな寝乱れも見せぬ浅い眠りに身を浮かべていた 。
ジャリ、と、砂を踏む音がした。
熟柿のような臭気が建物内に漂う。
「あーあ……」
男の声が意味もなく漏れた。
腰のあたりで鍵がぶつかり合う音がする。夜勤を任された番人が仲間と酒を飲んで帰って来たのだ。
頬を微かに紅潮させた男は、スキンヘッドを撫でながら小部屋のドアノブに手をかけようとする。
動きが止まった。
男はきょとんとした顔で牢を振り返る 。首を伸ばして何かを覗き込むようにしながら小部屋から離れ、一つの監房の前まで歩いて行く。
男が足を止めた牢の中には、世にも美しい女が目を閉じて座っていた 。
「何だ、こりゃ……。こいつも、姿鬼か……?」
男は瞬きを繰り返した。
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