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「えれぇ別嬪じゃねえか……。こんな姿鬼って、いるのか……?」
男のしょぼしょぼとした眼が次第に見開かれ、てらてらと光り出す。
卑猥な笑みが口元を歪めた。
「もう、封印されてんだよな……少しくらい、いいよなァ……」
男は腰につけた鍵束を手に取ると、一本を選んで錠に差し込んだ。
鈍い音が響くなり引きちぎるようにして鉄格子を開ける。
「へ……へへ……すぐ終わるからよ……」
男は色に狂った表情を浮かべて中に入り、匂うような美女に顔を寄せた。
女の目が、カッと見開かれた。
男はその瞳をまともに見た 。刹那、男の身は氷刃の如き視線に串刺しにされていた。
酒気が吹き飛び、我に還った番人は、異様な妖気が四肢を縛り上げていることに気づいた。
眼前の女の美貌が冷たく残酷に冴え渡る。
男は恐怖した。
女の赫き唇がゆっくりと開く。
研ぎ澄まされた犬歯が覗く―――その長さが、やけに目についた。
男の肢体はわなわなと震えた。
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