追憶

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 一階の寝室をカシルに譲り、二階の閉ざされていた母の部屋に移った為か、若しくは昨日、カシルに己の事情を打ち明けた為かも知れない……或いは……。  ゆっくりと起き上がると、黒髪がさらりと目元を覆った。  夢の中で露わになっていた心を再び朝日に透かされることを嫌うかのように、 暫くの間 ジークはその体勢のまま表情を隠していた。 「ドンドン!」  玄関先でドアを叩く音がした。  ジークは顔を上げる。 「おはようございます、ディゼルさん!ちょっといいですか!?」  家の外で男の叫ぶ声がする。
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