追憶

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 やけに元気な声を出すカシルの眼前が急に明るくなった。  ドアが開いたのだ 。 「何、今すぐ?」  頭にぶつかりそうな入り口の(へり)を手で押さえ、ジークは疲れたような声で尋ねた。 「うん、そうみたい」 「……あー、そう」  いかにも嫌そうな反応を返されたのは、初めてだった。  低血圧なのかな。カシルは思った。 「じゃあ、今階下(した)行くから」 「あ、待って。私、着替えが買いたいんだけど、どの辺で売ってる?」 「……説明するより連れて行った方がいいよな」 「まあ、町長さんの家からそう遠くないなら、お願いしたいけど」 「……わかった。待ってろ」  ジークは愛想なくドアを閉めた。  何か、機嫌悪いなあ……カシルは首を傾げた。
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