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「壁に寄りかかって、何事もなかったかのように眠ってたよ。扉が開いていたのに逃げ出しもせず……ああ、そういえば、自分から入ったんだったっけ。だけどあんな風に殺しておいて、よくのうのうと寝ていられるよなぁ。やっぱり姿鬼ってもう人間じゃないんだね」
「……そういうことをする人間も実在するだろう」
「まあ、中にはね。でも僕は、人は本質的にはそんなことを好む存在ではないと信じたいよ。こんな時世だからこそ」
主張が強固な一本道を形成しているエスターの瞳の輝きが己に届くことを拒絶するかのように、ジークは再び目を伏せた。
「そもそも姿鬼っていうのは、と言うか、あの頭領というのは、何なんだろう?実は“イン”は天上に実在していて、姿鬼はその臣下の者達で、頭領はその中でも特に“イン”に寵愛された者、そして時吸歌は“イン”の愛唱歌で、それによって臣下の魂を心を乱した人間の魂とすり替えているんだ、なんて 神話的な話を聞いたことがあるんだけど……、でも君たち神術師の説によると、“イン”は気結なんだよね」
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