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「まあ、そういうことになってはいる」
「そうするとやっぱり、姿鬼になるのは歌の呪力のせいで 、頭領になったりならなかったりするのはその人の体質によっているんだ、というだけのことなのかな」
ずずずっとエスターは一気に茶をすすった。優しげな雰囲気を持つ黒目がちな目に対し、意外にキリリとつり上がったラインを描いていた眉が、ほっとして額に皺を刻ませた拍子に下がって間の抜けた顔になった。
「お茶を飲むとほっとするよね。そういう感じが世情にも戻ってくるといいのに」
「さっきの神話だが、“イン”の 支配欲の強さを考えると、案外実話かもな。ところで、 結局何を仰りたいのか伺いたいんですが 」
我が道を行く町長のペースを無視してジークは話を進めた。
「結局ね?話を急ぐね。いや、本当にすまないんだけどさ、実は人が殺されたって聞いて、今日の夜の担当の番人が逃げちゃってさ。今日だけ!今日だけだから、夜の番人の代役、引き受けてくれないかな?明日までにはもちろん混乱を解消させて、本物の番人をつけられるようにするから」
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