懇願

6/7
前へ
/305ページ
次へ
「なんか、君、変わったよね……。昔は感情の幅が広かったのに。何よりもっと可愛かったよね、昔は」  ジークは一瞬言葉を失った。 「……いつの話ですか……」 「僕とよく遊んでた頃。四歳くらいの頃かな」  ジークは呆れたような表情のまま固まっていた。 「それは、誰でも変わるだろう」 「うーん、それにしても、今は暗……あ、いや、うん。ねぇ?」  ねぇ、と言われても。 「やはり、そろそろお暇させて頂きます」  もううんざりだと言わんばかりにジークは立ち上がった。 「 余計なこと言っちゃったかな……」  エスターは椅子から立とうとした。 「そのままで結構です。では番の方は今日の夜に直接収容所に行けばよろしいですね」 「交代時間は知ってる?」 「 ええ。では失礼します。お茶をご馳走様でした」  部屋を去ろうとしたジークは、呼び止められて振り返った。  エスターは 遠慮深げに言葉を送る。 「……あの、神術のことだけどさ。健闘を祈るよ。僕ら皆の問題なのに祈るしかできないなんて、情けないというか、 図々しいことだけどさ。でも 、もし何か協力できることがあったなら、遠慮せずに言ってきてほしい。力になるのが当然だからね」
/305ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加