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変貌
カシルは残骸と呼んだ方が相応しい商店街を歩いていた。
繁栄を見せていた時代にはさぞかし賑わったであろう飲食店は九割方閉鎖され、建築·彫刻の技術を駆使した建物ばかりが黒灰色にくすみ、眠りについている。物品を店頭に陳列している商店もまばらで品数もごく少ない。
それでも街であるだけはある。カシルは己の村を思い出しながらそう感じていた。
カシルが住んでいた村には商店の経営を続ける者はすでになく、村人は必要のある時だけ、店を畳み単なる民家と化した元商人の家を尋ね、所望する品を再度必要数だけ作ってもらったり、在庫品を譲ってもらったりしていた。それに比べれば、廃れていようとも商店街が未だに残っているということは驚くべきことだった。
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