送迎ツアー

2/3

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「初めて倉庫で先輩が発注ミスしてブツブツ言ってるの見たときはびっくりしましたもん。”数字の桁を1つも間違えるなんて初歩的なミス、店長には言えないー”とか、”30冊が300冊になってしまったら絶対に売れないし、倉庫にすら入らないかもしれない”とか、1人で永遠と呟いてたんすから」 「......。」  普段は人前では絶対に言わないようにしていた呪詛型の口癖をバックヤードで偶然見られたのは痛かった。 「それまでは先輩のこと、無口だと思ってたのにめちゃ喋っててウケましたぁ」  ウケたとは言っているが、その後の飯能に当時の僕はものすごく助けられた。キャンペーンを企画し、僕が誤発注した”美味しい親子丼の作り方”を完売させたのは飯能で、僕と店長との間も取り持ってくれた。 (僕には出来ないことを飯能はできる)  年下だとかそういうのは置いておいて飯能は凄い。  バイト先で飯能という話相手が出来たのも嬉しいが、その反面飯能は僕をことあるごとに外に連れ出そうとしてきて迷惑だと感じることもある。 (つまり僕は飯能には感謝もしているし厄介だとも思っている)  でも、どちらかと言えばーー 「あの時までは他人とここまで話せるようになるとは思わなかった。僕は僕なりにお前が居てくれて良かったとは思ってるからな」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加