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警察に通報した。
店長に連絡した。
飯能の実家に行った。
「目撃情報感謝いたします。それで詳細なのですがーー」
「繊細くんは間に合わなかったんだね。仕方ない」
「飯能家の子供が攫われるなんて己の不覚だから君には関係がない」
あの公園に戻った僕は何も出来ずに立っている。
(僕が飯能をちゃんと迎えに行っていれば)
(くだらない意地を張っていなければ)
後悔は尽きない。
「僕のことを責めろよ。任されてたのに守れなかったって言って詰ってくれよ。その方が幾分か気分がマシになるのに」
現実は人間関係にさざなみを立てないために誰かが誰かを面と向かって責めることすらもうないのに。己の不甲斐なさを黙られている静寂が心地悪い。
「はは、こんなときでも僕は僕自身のことしか考えられない」
誰かが言った言葉が忘れられない。
“イイノ ソラなら大丈夫”
それは僕であり、他の大勢の人が一度は口にした言葉だった。
「大丈夫なわけないだろ」
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