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「本当は僕、気が付いてた」
飯能の髪が男の子と見間違えるほどに短く切られているのは本人の意思ではないこと。
飯能が長いウィッグ付きの帽子を被っているのはバイトやプライベートのときだけなこと。
飯能は家に帰る前に必ずウィッグを外すこと。
飯能の私服が男モノで女性モノとボタンの位置が逆なこと。
バスジャックのときに、僕よりも早くに震えて涙目になっていたこと。
自由にした手で涙を拭って平気そうな顔をつくったこと。
僕の手を握ってくれたとき、飯能の手の方が震えていたこと。
強く見せないと生きていけなかっただけで、本当は飯能は僕と同じくらいの臆病者のチキンだ。
決して能天気な奴じゃない。
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