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僕、千賀 哉耶は古本屋のバイトの後輩である飯能 天と一緒にバスでスキーに向かっていた。
あぁ、そうだ。......決して”はんのう”ではなく、”いいの”であることがポイントらしい。そんな彼女はこの状況を楽しむかのようにニカっと笑い、小声で応答した。
「あっははー。そもそもたった2人でバスジャックするのは理にかなってないすよねー」
飯能はいつの間にか後ろ手に縛られていた筈の手を自分で外してブラブラとしている。
「おい馬鹿やめろ。こういうバスジャックの定番を知らないのか。実は乗客の中に隠れた仲間が居てそいつが不審なことをし始めた乗客を後ろから刺すのがセオリーなんだぞ。この監視カメラや携帯が普及した現代ではリスクを恐れずにバスジャックをするっていうことはそれなりに勝算があるはずだし、バカそうに見せてるのすらフェイクかもしれないのに」
「いや絶対にあの人達そんなIQないですってー」
小声とはいえ聞かれたら完全にアウトな会話だ。もうやめたい。やめたいが恐怖で何かを喋っていないともう自我を保てそうにもない。
犯人達は何かの事件で捕まった同志の解放だとかを要求しているらしい。交渉は決裂し、辺りはまた静寂が包んだ。
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