プロローグ

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ーー数時間が経過した。  何度目かの交渉の最中もお腹は空くし、周りの乗客の恐怖は伝染するし、警察からの差し入れだというおにぎりはまだ犯人から配られていない。若干、尿意だって感じて来ている。 (ここで死ぬんだったら、せめてパソコンの履歴とTwitterのアカウントと、後DLした画像とか諸々消しとくんだった)    震えが止まらない僕に飯能が手を握ってくれている。4つも下の女の子に励まされるなんて情けなさすぎた。  そんなときだった。 「要求を呑む!」  僕よりも先にねを上げた犯人はついに警察の交渉に応じるらしい。女子供を解放するからバスから降りろと命じてきた。  犯人に近い前方の席の女性がバスから降ろされ、警察に保護されたのか周囲から歓声が上がる。 「うわぁぁぁぁぁあん!!! 助かったぁぁあ!!」  バスの外からどう聴いても年配の女性が一際大きな声で叫んだのが聞こえた。飯能は触れていた僕の手を離して小声で呟いた。 「先輩、ほ〜ら。今日はこんな私と一緒で良いことありましたねぇ」
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