Re.スーパーで売られていた件について

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Re.スーパーで売られていた件について

 まさか、スーパーで昔の恋人が売っているとは思わないだろう。 こんなスーパーが存在して大丈夫なんだろうか。 どうして、周りの客は皆、当たり前のように買い物カゴを手に歩き回っているのか。 真空パックで仮死状態になった彼女を見て、俺は小さなため息をついた。 ご丁寧にラベリングされた挙句、早く売ってしまいたいとばかりにお値打ちのシールまで貼られている。 そう、彼女と出会ったのは真冬の北海道の冷たい海だった。 俺はあてもない旅をしていて、縞模様の美しい彼女と出会い、夢中になったのだ。 外見じゃない、人は言うけれどやはり外見は美しい方がいい。 たとえ、彼女が浅蜊だったとしても。  結局、花火が燃え尽きるように呆気なく、「昔のあなたが好きだった」と彼女から俺に別れを告げてきた。 「ねえ、やっぱりママ、あさりのスパゲッティ食べたいな」 いよいよ、彼女も俺も運命の時が来たか。 生まれ変わるなら人間がいい。 恋だって自由だし、突然パック詰めされたりしないだろう。 浅蜊だけは真っ平ごめんだ。 「そうねえ、砂抜きが面倒だから今度にしましょう」 去っていく足音にホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、大きな黒いふたつの目がこちらをのぞいていた。
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