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それから仕事以外で会うことになり、会社の話をしたり、具体的に進めていった。まるでビジネスパートナーである。話し合い場所は、四季さんの家である。
「婚姻届、書いてください」
これは融資の書類ではないけど。契約書のように四季さんに渡された。いや、これは俺がほんとは用意すべき書類だけど…。それどころではなく、会社関係の書類など作成したりしてたから。
「あの…その件で。実は…相談があります」
「なにか?」
「あなたの会社なので、…名前は斎藤でなく、金井にしませんか?私の苗字も金井にさせてください」
「え、なんで」
「私は…この苗字が嫌いです。申し遅れましたが、両親は離婚していて、親権は母なのですが、どこかいなくなりました」
「斎藤さん、私は絶対離婚しません。だから、ずっと金井にしてあげます」
「…ありがとうございます。それから、弟がまだ学生です。弟の生活費分は、俺が払っているので…申し訳ありませんが、会社には全てを入れられません」
「…わかりました。では、婚姻届書いて下さい」
弟に相談したこと、ちゃんと言えた。よかった。
「一人称俺なの?」
「あ、すみません。うっかり」
「いつもなんですか?」
「はい」
「じゃあそのまま、俺って言って」
「…はい」
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