銀行員

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銀行員

事務所に勤める人たちから、まるで会社の同僚みたいですね。と、よく言われる。 同僚というのは間違いないのだが…。 それは四季(しき)さんが、すこぶる気ままにしてるからだろうか?それとも俺が、すこぶる気ままなのだろうか? 四季さんと出会ったのは銀行。 その銀行で融資を担当していた、俺。斎藤虎一郎(さいとうとらいちろう)である。 「なんで、お金貸してくれないんですか?」 「申し訳ありません。何度も申し上げておりますが、実績もなく、計画もないので…」 「私はどうしても個人事務所にしたいんです。お願いします」 困った。履歴書を見たけど…この子は、大卒で建築士の免許持ってるけど…他で働いてすぐ辞めてるし全く貯金もないし。 「ご実家に相談できないのでしょうか?」 「だめです。親は年金生活です。遺産ねらえってことですか?」 「いえ、違います。なにかできることはないかと考えたことを述べたまでです」 「何回来てもだめですか?計画もちゃんと、もうすごい考えたんです!」 「…申し訳ありません。従業員もなく、経営する、というのは…あまりに非現実的です」 「友達とはやりたくないです。…仕事とられたから…。私いろいろ賞とか取ってますし、いいデザインなんていくらでも湧きます。だから、私を売りたいんです!どうしたらいいんですか?」 「…親戚や、知り合いなどと、共同経営という手もございます」 「無理です。馴れ合いとか嫌です」 困った。毎日のようにやってくる。どうしたら諦めてくれるのだろうか。
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