ほつれた心も縫い留めて

公園の男

　商品を配達して客に手渡し金を受け取るなんて、レジチェッカーより接客時間が長いではないか。本当に、今回限りにしてほしい。
　亜希は惣菜のサブチーフから、10折の弁当がきっちり入れられたダンボール箱を、台車ごと受け取った。箸が入っていることを確認していると、一般食品担当のベテランアルバイトが、500mlペットボトルの緑茶が10本入ったレジ袋を持ち、駆けつける。

「すみません住野さん、よろしくお願いします」

　若い男子2人と、事務所から出てきた店長に深々と頭を下げられる亜希は、女王の名に相応(ふさわ)しい……と思われたかどうかはわからないが、バックヤードをうろつく学生アルバイトたちから、半ばあ然としたような視線を浴びた。

　運転中、亜希は仕事とは関係ないことを考えて、独りでにやにやしていた。今朝アップしたももちゃんの写真が、いつになく沢山のいいねを貰っているからだ。

「ももちゃん今日は大人な表情ですね！」
「木漏れ日かな？　きれい♡」
「早く春が来るといいね」

　ももちゃんをいつも見てくれているフォロワーから、コメントも次々と寄せられていた。
　自分のぬいぐるみを外出させて撮影する人たちのグループに、亜希は緩く繋がっている。大切にしているぬいぐるみの写真を、皆が日々アップしてくるのを見るのが楽しい。