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どこまでも不遜な男の物言いに、尋問官たちは顔を見合わせため息を吐く。
これ以上はもはや時間の無駄だと、背後に控えていた部下に向かって指示を送った。
「もう良い、連れていけ……。ああ、決して拘束は解くなよ。何をするかわからんからな」
尋問官の命に頷いた部下が短く何事かを唱えると、男を拘束していた椅子全体が淡い光を放ち始める。その光はやがて部屋全体に刻まれたラインをなぞるように広がっていき、それが空間全体を満たすと同時に異変が起きる。
男の背後にある壁が独りでに亀裂を生じさせ、真っ二つに割れたのだ。男を拘束する椅子は、その狭間に吸い込まれるように移動していく。
「さらばだ、魔拳。次に会うのは処刑場だな。もっとも、我らは直接手を下さんがね」
「君のような怪物を葬り去るには、手間がかかって仕方ないのだよ」
尋問官たちの皮肉が込められた言葉にも、男の表情は微動だにしない。
その口元に湛えらえた笑みから感じられるのは、未だ数千年の因果に囚われ続ける憐れな子羊どもに対する嘲笑だけだった。
お前たちは、所詮天に吊るされた糸繰人形に過ぎないのだと。
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