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私は株式会社アケイに勤めていてこの度さらなる飛躍……自分の夢を叶えるために自ら退職した。
ドラマのように朝早くに出勤し次期社長──と言われているタナカさん──の机の上に『退職届』と書かれた封筒をそっと置いてきた。
わざわざ朝早くに起きて届け出を出すのも先輩に会って気まずくなったり説得されるのを防ぐためだと同じ気持ちになって思った。
二十八歳での退社。まだ間に合うはず。
そう信じて私は認・紅娘へ向かった。
この『認』は世界公認の企業に示される。と私が勝手に名付けた。
面接は集団で行われ私は最後だった。最初の人が志望動機を言うとき、
「私は御社の『ベニムスメ』さんのゲーム開発に携わりエガワで積んできた技術を使ってより素晴らしい作品を後世に残していきたく──」
「なるほど。安村さん、一つ言っておくが我が社名は『ベニムスメ』ではなく『テントウムシ』だ。覚えておきなさい」
今まで知らずに生きてきたのだろうか。も、もちろん私はし、知っていたが。
結果は採用だった。
私の名前は諸星真斗。又の名を『M』。将来世界を股にかけた大発明家となる予定だから覚えておくがいい。ただし濁点は付かない。名前に濁点は付かないぞ。大事なことだから2回言ったぞ。いいな、名前に濁点は──。
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