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「はあ、はあ、はあ、づがれだぁ……」と自分の口から今にも死にそうな声が出る
(ヒールなんか履く必要ないだろう……)
先ほどまでクローディアのことで作法を習っていたのだが、
「女性はヒールを履くことが多いですから、慣れましょう」と5cmのヒールを履かせられたのだ。
いつもぺったんこな靴なだけ、高さに違和感を感じ、足が震えまるで「生まれたての子鹿のよう」と称され歩くたび挫き、すっ転ぶ。
その状況を繰り返し、2時間。やっとギリギリだが、合格ラインを越えることができた
「つ、ぎは、食事の作法か……」次は食事を食べる際の作法を習いに行く。ちなみに教えてくれるのはウィリアムだ。
ウィリアムに習う理由は、既に作法を身につけているのにまた習うことで怪しまれないように、万が一俺がフィリーネの身代わりということを外部に漏れないようにするためだ。
「いらっしゃい。ロウ」とウィリアムは微笑んだ
「あぁ。」と返事をすると
「あぁ、という返事は姉様はしないから気を付けて。何でバレるかわからないからね」と注意される
ちなみに俺が『ロウ』と呼ばれている理由。それは俺が『山田太朗』と名乗っているからだ。
明らかに偽名と思うだろう。もちろん偽名だ。
異世界のお決まりでは真名契約だとか、本当の名前を知られることで変な契約など結ばれたら嫌だからだ。
ただ、この世界の人に「山田太朗」という発音は難しく、「ヤマダタ、ロウ」と聞こえるらしい
「太郎だ。」
「タ、ロウ」
「……山田、太朗」
「ヤマダタ、ロウ」
諦め、ロウと呼ばれることにした。まぁ、「タロウ」はこの世界の人の名前と比べると可笑しいしな。「ロウ」ならおかしくはないと思う。
「では、席について。始めるよ。」とウィリアムの声と共の料理が運ばれてきた
運ばれてきた料理は、横にスライスされたようなきゅうりが巻かれた円形のオードブルというものらしい
「こういう料理は崩れないように食べるんだ。一口サイズに切るといい。」とウィリアムは優雅な所作で切り、口元へ運んだ
(すげぇ…)と思った。
もし、自分が切るとき、優雅に切れるのだろうか?と思った。簡単にウィリアムは切っているが、ナイフに添えている人差し指を切る部位によって力のかけかたを変えていた。
それに一度も音を立てず切っていた。カチャカチャなってしまいそうだが、ウィリアムは切る際一切なっていない
早速、実践しようとするが…
「ナイフとフォークの持ち方。違うよ。右利きだろう?なら、フォークは左手。ナイフは右手だ。そして、人差し指を軽く添える」
「こ、こうか…?」と聞くと、
「こうか?じゃないよ。姉様だったら「こうかしら?」だから、なるべく女性らしい喋り方を心がけて」と注意されてしまった
(これは前途多難だ……)
前の世界では一切ではないが作法は習っていない。コース料理の作法なども全く知らないので、一から始めることになる。
***
食事作法を終えたとき、すでにクタクタだった。
(あれで一般的で、格式が高いのは11品も出るのか……)
今回は一般的なコース料理だったので7品だったが、王宮や高位貴族との食事会は11品出るそうだ
(腕がプルプル…食事って疲れるものか…?)
明日筋肉痛になることは確定したが、学べたことは沢山あった。
ウィリアムはあれからも一切音を立てないで食事をしていたので質問してみると、
「音を立ててたら、相手の話し声が聞こえづらいだろう?だから、静かに食べて聞いてますよ。という意思表示みたいなものだ。」
「作法も奥が深いんだな……」
ウィリアムの話を聞き、これからも頑張りたいと思った
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