僕の日常

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僕の日常

キーンコーンカーンコーン。ガラガラガラ。 先生「先日やったテスト返すから全員席つけー。」 生徒「えー!」 生徒「聞いてねーよー...」 先生「言ってないからな。」 僕がいつものように空を眺めていると先生が教室に入ってきてそう言い放つと共に授業が始まった。 実はつい最近、僕の唯一の親友だった黒瀬 陽向が亡くなった。死因は電車事故だそうだ。 生徒の間では 「事故とか言ってるけど自殺なんじゃないの?」「自殺を隠すために事故って言ってるだけだろ。」 など様々な噂が流れている。そんな奴らに僕は反吐が出る。陽向が自殺なんかするわけないだろ?今まで1番近くで見てきたんだ。陽向のことは僕が良く分かる。そういう風に噂に尾ひれがついていくことで苦しむ人がいることを知らない奴らが好き勝手言っている。僕は空を眺めるのが好きだ。でも、僕の大切なものが無くなった今でも変わらず青い空が広がっていて心の中には黒くモヤモヤしたものが渦巻いている。鬱屈感のようなもの...後悔?絶望?いや、そんな生ぬるいものじゃない。言葉に言い表すことが出来ない。言葉にしてしまえば頭が痛くなる...あの日一緒に帰っていれば...委員会さえなければ...学校さえなければ。 先生「蒼!成瀬 蒼!」 蒼「はい。」 テストを受け取ると同時に先生はこう言った。 先生「どうした?最近成績が下がってきてるぞ。何か悩みがあるなら聞く...」 蒼「ありがとうございます。すみません。」 先生「...おう。」 -放課後- キーンコーンカーンコーン。 はぁ... 黄昏時のこの空を眺めている時間が1番好きだった。なぜなら僕がこうして空を眺め待っていると 「おーい!一緒に帰ろ!」 そう言って陽向が駆け寄ってくる。そして一緒に帰るんだ、毎日同じ帰路を。それがこうして来ないとわかっている今もどこか期待している自分がいて、やっぱり来ないことを自覚すると本当にもう帰ってこないことに酷く落胆する。そんな毎日だ。 先生「おーい。またこんな時間まで残ってんの?」 蒼「何ー、心配性の内野君。」 内野「あのなぁー...昼間テスト返す時と授業中、それから最近の様子見てれば嫌でもわかるよ。それにいくら従兄弟でも流石に君呼びやめろよ。」 蒼「いいじゃんそれくらーい」 内野「...陽向のことだろ?」 蒼「...」 内野君はいつになく真剣な眼差しで僕の方を見てる。まるで僕の心の中を見透かすように。そして僕も同じように見返す。 内野「はぁー...最近のお前心配なんだよ。授業中も上の空だし...何より陽向がいなくなって人生が楽しくないような、終わったような顔してんだよ。」 蒼「そうだね...僕の人生は全て陽向中心に回ってた。それが無くなってしまった今はどうすればいいのか分からない。陽向の名前を言葉に出す度に気が狂いそうなんだ。出さなくても考えているだけで後悔や憎しみ、悲しみがどっと押し寄せてくる。あの笑顔をもう見れない。一緒に帰れない。一緒に話せない。朝起きた瞬間にまたそんな日々が続くんだと思いながら重い足取りで仕方なく登校する。心底嫌になるよ。」 内野「分かるよ...でも陽向は自分のせいで学校や委員会、人生を嫌いになって欲しくない...そう思うんじゃないか...?」 蒼「分かってる!分かってるよ...そんなこと...よく分かってるからこそ、それを意識して生きようと思う度訳が分からなくなっていく。自分が自分じゃなくなっていくんだ。」 内野「分かるよ。凄く分かるけど...」 蒼「さっきから分かる分かるって何だよ!...分かったふりして善人ぶるやつが1番嫌いなんだよ!いつも僕の周りには分かる分かるって知ったかぶる奴がいた。そういう奴が...そういう奴が...あ゙ぁ゙ー...もう......」 内野君が優しく僕の頭を撫でぎゅっと包み込むようにハグをした。 内野「俺な...恋人がいたんだ。まあ、そいつは男でさ...本当に優しくてかっこよかったんだ。でも、そいつも事故で死んじまった。なぁ、お前も陽向のこと好きなんじゃねぇの?そのことに本当はもう自分でも何となく分かってる。でも陽向は男で、自分の都合でこの関係を終わらせたくない...そんなことでこの関係を変えることは出来なくて気づいてないフリしてんじゃねぇの?」 蒼「はっ...はぁ!?え...やっぱり...そ...そうなのか...な」 内野「あのな...死ぬ前に気づけよ(笑)お前ら、誰がどう見てもお似合いのカップルだぜ?それにアイツもお前のことが好きだったんだよ」 蒼「えっ...!それ...本当?」 内野「嘘言わねーよ。」 蒼「そっか......もぅ...先に言え...よ...陽向のバカァ...!うぅー...陽向ぁー...!」 それから何も言わずに内野君は僕のことをずっと優しく撫で続けてくれた。そしてしばらくしてから僕達は帰った。 蓮「あーあ...酷いな内野先生。僕がずっと好きだったことばらしちゃうんだもん。しかも僕の役目取らないでよねー...僕が好きなこと知ってて撫でてるし...あーもう......今日も空はオレンジだな...」
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