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「六根ー、緋矢ー、おやつよー!」 「わーい!」 「ホットケーキ!?」 「大正解、さあ、召し上がれ。」 きつね色に焼かれたホカホカのホットケーキを目の前に置かれ兄弟は目を輝かせる。 カラッと晴れた午後3時。 黒江家の何気ない日常が今日も送られる。 学校に行って、おやつを食べて、勉強して、ゲームして、夕飯を食べ、そして家族と一緒に眠る。 そんなありふれた日常___のはずだった。 「………けほっけほっ、?」 「にいちゃ、?けほっ、」 最初に異変に気づいたのは兄弟だった。 なんだか息がしづらいし咳が出る。 周りを見渡せば靄がかかったように見えづらい。 「かあさ、?」 「とうさん、」 それぞれ隣にいる父と母を起こそうとゆさゆさと揺らす。 ………反応がない。 不思議に思っていると、ふと視界の端で何かが動いた。 それは、白いローブを纏っていた。 それは、血塗れのナイフを持っていた。 「君たちはこれから楽に死ねるんだよ」 そう呟いて白いローブは消えていく。 兄弟は幸運にも血塗れのナイフも見えなかったし声の意味も理解していなかった。 ただ、本能的に彼らは思った。 ここに居てはいけない、と。 両親もきっと外の人が助けてくれる。 「あかや、助けを呼びに行こう」 「うん、にいちゃん」 よたよたと玄関までたどり着き、外へ出る。 アパートの階段を降りて二人は叫ぶ。 「だれかー!」 「たすけてー!!」 その刹那。 ボン、と爆発音が閑静な住宅街に響いた。 振り返った二人は目を見開く。 だって__今まで自分達のいたアパートが轟々と燃えているのだから。 「……っ!かあさん!とうさん!」 兄である六根はいち早く状況を察知して駆け出す。 しかし、騒ぎで起きてきた近所の人に押さえられてしまう。 「行っちゃダメよ!」 「やだ!はなせ!とうさん!かあさん!」 「とうさん、かあさん、?」 なおも行こうと暴れ涙を流す兄の六根。 何も出来ず絶望する弟の緋矢。 彼らの目の前でただ、無慈悲に炎は揺れる。
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