有能なビジネスパーソンのテーゼ

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有能なビジネスパーソンのテーゼ

 暁の刻、大都会に訪れる(ひと)ときの静けさの中で、朝焼けに染まりはじめた都心の風景は、つかの間の闇へと沈んでゆく。高層マンションから、その一見不可思議にも感じられる現象を眺めると、不思議と気分は高揚している。  凛とした朝の冷気が、有能且つ実直な僕に、これから一週間の激務と対峙するに十分な気合を入れてくれる。  青く澄みきった空には、鳥たちの影が悠々と舞い、黄金色に輝く三個のパチンコ球も編隊をなして都心部へと飛び去ってゆくではないか。――少し首を傾げ考えさせられた。しかし、考えるのは止めておこう。意味がわからないもののことなど考えてもしようがない。答えのない問題で時間を浪費するのは、懸命ではないからだ。人生の限られたリソースを有効活用してこそ、有能なビジネスパーソンといえよう。  チン!  朝のしじまに不似合いなベルの音が珍妙なる色を差す。
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