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「はい、よろしいですよ」
その後、私は旦那様と共にダンスの練習に励んだ。
サイラス曰く、旦那様もダンスはかなり久々だったらしく、かなり腕が落ちていると。
そう言ったサイラスの目は、何処となく怖かった。それこそ、旦那様が怯んでしまわれるくらいには。
「旦那様。少々、腕が鈍っていらっしゃるご様子ですね」
「……あ、あぁ、しばらく、踊っていなかったからな」
「というわけで、今後は奥様と共にダンスの練習をしましょう。それこそ、辺境伯として侮られないほどにならなくては」
「え……」
サイラスの言葉に、旦那様が言葉を詰まらせてしまわれた。
……サイラスのダンスレッスンはかなりのスパルタである。正直なところ、出来れば受けたくないと思うほどに。
それを、旦那様は理解されているのだ。だから、こんなにも怯まれている。
「お、俺は……だな。仕事が立て込んでいて……」
「そんなつもりでどうするのですか。今後、社交の場で奥様とお踊りになられるのでしょう?」
「う、だ、だがな……」
「問答無用です。旦那様のお仕事のスケジュールはこちらで調整しておきますので」
どうやら、旦那様も今後ダンスのレッスンに参加することが決まったらしい。
それを悟りつつ、私はほんの少しだけ肩をすくめた。
(正直、嬉しいの……かも)
旦那様はお忙しいので、最近あまりともに居られる時間がない。そういうこともあり、私は少し、ほんの少し寂しかった。
だから、旦那様と少しでも一緒に居られるのが、嬉しいのだ。
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