第3話 近づく限界

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「はい、よろしいですよ」  その後、私は旦那様と共にダンスの練習に励んだ。  サイラス曰く、旦那様もダンスはかなり久々だったらしく、かなり腕が落ちていると。  そう言ったサイラスの目は、何処となく怖かった。それこそ、旦那様が怯んでしまわれるくらいには。 「旦那様。少々、腕が鈍っていらっしゃるご様子ですね」 「……あ、あぁ、しばらく、踊っていなかったからな」 「というわけで、今後は奥様と共にダンスの練習をしましょう。それこそ、辺境伯として侮られないほどにならなくては」 「え……」  サイラスの言葉に、旦那様が言葉を詰まらせてしまわれた。  ……サイラスのダンスレッスンはかなりのスパルタである。正直なところ、出来れば受けたくないと思うほどに。  それを、旦那様は理解されているのだ。だから、こんなにも怯まれている。 「お、俺は……だな。仕事が立て込んでいて……」 「そんなつもりでどうするのですか。今後、社交の場で奥様とお踊りになられるのでしょう?」 「う、だ、だがな……」 「問答無用です。旦那様のお仕事のスケジュールはこちらで調整しておきますので」  どうやら、旦那様も今後ダンスのレッスンに参加することが決まったらしい。  それを悟りつつ、私はほんの少しだけ肩をすくめた。 (正直、嬉しいの……かも)  旦那様はお忙しいので、最近あまりともに居られる時間がない。そういうこともあり、私は少し、ほんの少し寂しかった。  だから、旦那様と少しでも一緒に居られるのが、嬉しいのだ。
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