第3話 近づく限界

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「奥様、よかったですねー!」  私のその様子を見てか、クレアがにっこりと笑ってそう声をかけてくれる。……どうやら、彼女とマリンには私の心の奥底の気持ちなどお見通しらしい。 「えぇ、本当によか――」  ――よかった。  そう、口に出そうとしたときだった。 「――っ!」  私の身体が、不意に傾いていく。その場に倒れこみそうになったものの、寸前でマリンが私の身体を受け止めてくれた。 「シェリル!」  驚いたような旦那様のお声が聞こえてくる。そのお声に耳を傾けながら、私は重たい瞼を開いた。  心配そうに私の顔を、旦那様が覗き込んでいらっしゃる。……どうして、そんなにも悲しそうなお顔をされているの? 「旦那様。至急、奥様を私室に!」 「わかっている!」  サイラスの指示を聞いて、旦那様が私のことを横抱きにしてくださる。普段ならば照れてしまうこの状況。けれど、今は照れることなんて出来ない。 (身体に、力が入らない……)  どうしてなのだろうか。割と意識ははっきりとしているのに、身体に力が入らないのだ。  口を動かすことさえも、瞼を開けることも億劫で。私はただ旦那様に運ばれることしか出来ない。 「至急、ロザリアさんを呼びます!」 「お願いします、マリン」  側からサイラスとマリンのそんな会話が聞こえてくる。周囲は楽しい雰囲気から一転、慌ただしい空気となった。 (私の、所為で……)  そう思うと、辛くなってしまう。  最近の私は、どうにも調子が悪い。その所為なのか、こういう風に倒れてしまうことも少なくなかった。  だけど……。 (なんとなく、どんどんひどくなっているような……)  倒れる頻度は高くなっている。挙句、私の調子もどんどん悪くなっている。
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