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「奥様、よかったですねー!」
私のその様子を見てか、クレアがにっこりと笑ってそう声をかけてくれる。……どうやら、彼女とマリンには私の心の奥底の気持ちなどお見通しらしい。
「えぇ、本当によか――」
――よかった。
そう、口に出そうとしたときだった。
「――っ!」
私の身体が、不意に傾いていく。その場に倒れこみそうになったものの、寸前でマリンが私の身体を受け止めてくれた。
「シェリル!」
驚いたような旦那様のお声が聞こえてくる。そのお声に耳を傾けながら、私は重たい瞼を開いた。
心配そうに私の顔を、旦那様が覗き込んでいらっしゃる。……どうして、そんなにも悲しそうなお顔をされているの?
「旦那様。至急、奥様を私室に!」
「わかっている!」
サイラスの指示を聞いて、旦那様が私のことを横抱きにしてくださる。普段ならば照れてしまうこの状況。けれど、今は照れることなんて出来ない。
(身体に、力が入らない……)
どうしてなのだろうか。割と意識ははっきりとしているのに、身体に力が入らないのだ。
口を動かすことさえも、瞼を開けることも億劫で。私はただ旦那様に運ばれることしか出来ない。
「至急、ロザリアさんを呼びます!」
「お願いします、マリン」
側からサイラスとマリンのそんな会話が聞こえてくる。周囲は楽しい雰囲気から一転、慌ただしい空気となった。
(私の、所為で……)
そう思うと、辛くなってしまう。
最近の私は、どうにも調子が悪い。その所為なのか、こういう風に倒れてしまうことも少なくなかった。
だけど……。
(なんとなく、どんどんひどくなっているような……)
倒れる頻度は高くなっている。挙句、私の調子もどんどん悪くなっている。
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