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その後、ゆっくりと重たい瞼を開ける。
一番に視界に入ったのは、見慣れた天井。……夫婦の寝室だ。
どうやら、私は意識を失ってしまっていたらしい。
そっと隣を見ても、誰もいない。部屋のカーテンは閉まっているけれど、光が入ってこないことから今は夜なのだろう。
……こんな時間に誰かを呼ぶのは、気が引ける。
(……もう一度、眠ろうかな)
起きたことを知らせるのが一番いいのかも。だけど、夜に使用人を呼ぶのは憚られてしまった。だって、彼らにも休息はあるもの。
もう一度瞼を閉じるとほぼ同時に、寝室の扉が開いた音がした。
……誰か、来たのかな。
「奥様~、入りますよ~」
私が眠っていると思っているのか、差し足忍び足で近づいてくる誰か。……声からして、クレアだろうか。
彼女の気配を感じて、私はもう一度瞼を開ける。身体を起こそうとするものの、やたらと身体が重苦しくてうまく起き上がれない。
「あっ、奥様!」
「……クレア」
クレアが私の目覚めに気が付いて、慌ててこちらにやってきてくれる。
彼女は私が起き上がろうとしているのを見て、顔を青くして止めてきた。
「ダメでございますよ。……まだ、本調子ではないのですから」
「……でも」
「侍医の見立てによれば、やはり魔力不足が原因だそうなので……」
眉を下げてクレアがそういう。
それすなわち、普通の病気ではないということ。
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