第5話 相談事

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 次の日の朝。  私は重苦しい瞼を開いて、ぼうっと天井を見上げる。  ……身体は、まだ重い。まるで自分の身体ではないのではないかと思えるほどだった。  そんなことを考えながら、少しだけ身体を動かして壁にかかった時計を見つめる。  時間は、普段の目覚めの時間よりも二時間ほど遅い。 (……寝かせておいて、くれたのね)  私の調子が悪いとき、このお屋敷の人たちは皆そろって私をそっとして、寝かせておいてくれる。  それがありがたいような、何ともむず痒いような。  そう思いつつ、私はサイドテーブルの上にあるベルをちりんと鳴らす。  すると、数分後に寝室の扉が開いてマリンが顔を覗かせた。 「奥様~、お目覚めですか?」 「……えぇ」  控えめにかけられた声に、私は返事をする。そうすれば、彼女はホッと胸をなでおろしつつ、私の方に近づいてきてくれた。  押しているワゴンには、朝食などが載せられている。 「あまり食欲がないかもしれませんが、食事をされなければ余計にお身体に悪いので……」  それは、理解している。なので、私は文句を言うことなく頷いた。 「旦那様にも、奥様がお目覚めになったという連絡を入れておきますね」 「……けれど、無駄に心配をかけてしまうじゃない」  そうだ。ただでさえ旦那様はお忙しいのだ。最近はそのお忙しさに拍車がかかっているというし、あまり手を煩わせるわけには――。 「いえいえ、旦那様も奥様のご体調を心配されておりましたので」  対するマリンはにっこりと笑ってそう言ってくれる。……そっか。私はもう、一人じゃないんだ。
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