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しとしとと窓の外で雨が降ってる。
その光景をちらりと見つめつつ、私はパンパンとたたかれる手に合わせて、ステップを踏む。
(……そろそろ、足が痛くなりそう)
心の中でそう思いつつ、私、シェリル・リスターは覚えたダンスのステップを踏む。
そんな私を見つめるのは、このリスター家の執事であるサイラス。元々は『サイラスさん』と呼んでいたけれど、この家の奥様になった以上呼び捨てが妥当。そういわれ、私は彼をサイラスと呼ぶようになった。
「えぇ、奥様。かなり良くなりましたよ。……休憩にいたしましょうか」
それから少しした頃。サイラスはそう言ってくれた。
それに合わせるかのように、私の専属侍女であるクレアとマリンがすたすたとやってくる。彼女たちは手早く椅子を用意すると、汗をぬぐうためのタオルと、冷たいお水をサイドテーブルにおいてくれた。
「いやぁ、かなり上達しましたね。この調子ですと、もうすぐダンスのレッスンも終えることが出来そうですよ」
ニコニコと笑いつつ、サイラスが私に声をかけてくる。
……正直、ダンスのレッスンは苦手だ。体力を使うことに問題はない。問題があるとすれば……そう、私のリズム感のなさ。
(ここでやって行こうと思ってから頑張ってきたのだけれどね……)
私はそう思って苦笑を浮かべる。
ここ、リスター家はウィリス王国の辺境伯爵家の一つであり、王国にとって守りの要の家の一つである。
そんなリスター家の現当主ギルバート・リスター様と結婚して早三ヶ月。……私は、奥様業に勤しんでいた。
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