第1話 新米奥様と使用人

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 しとしとと窓の外で雨が降ってる。  その光景をちらりと見つめつつ、私はパンパンとたたかれる手に合わせて、ステップを踏む。 (……そろそろ、足が痛くなりそう)  心の中でそう思いつつ、私、シェリル・リスターは覚えたダンスのステップを踏む。  そんな私を見つめるのは、このリスター家の執事であるサイラス。元々は『サイラスさん』と呼んでいたけれど、この家の奥様になった以上呼び捨てが妥当。そういわれ、私は彼をサイラスと呼ぶようになった。 「えぇ、奥様。かなり良くなりましたよ。……休憩にいたしましょうか」  それから少しした頃。サイラスはそう言ってくれた。  それに合わせるかのように、私の専属侍女であるクレアとマリンがすたすたとやってくる。彼女たちは手早く椅子を用意すると、汗をぬぐうためのタオルと、冷たいお水をサイドテーブルにおいてくれた。 「いやぁ、かなり上達しましたね。この調子ですと、もうすぐダンスのレッスンも終えることが出来そうですよ」  ニコニコと笑いつつ、サイラスが私に声をかけてくる。  ……正直、ダンスのレッスンは苦手だ。体力を使うことに問題はない。問題があるとすれば……そう、私のリズム感のなさ。 (ここでやって行こうと思ってから頑張ってきたのだけれどね……)  私はそう思って苦笑を浮かべる。  ここ、リスター家はウィリス王国の辺境伯爵家の一つであり、王国にとって守りの要の家の一つである。  そんなリスター家の現当主ギルバート・リスター様と結婚して早三ヶ月。……私は、奥様業に勤しんでいた。
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