第5話 相談事

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 自分の手のひらを見つめる。……ちょっと荒れた手。庭師と一緒に庭仕事をしているから、当たり前なのかもしれない。けど、貴族令嬢としてはダメなのだろうな。なんて。 「奥様? 何か考え事でございますか……?」  そんなことを思っていると、不意にマリンがそう声をかけてきた。そのため、私は誤魔化すように笑う。 「いえ、何でもないわ」 「……そうでございますか」  マリンが悲しそうな表情を見せる。……ごめんなさい。これは、マリンやクレアには相談できないことなのよ。 (だったら、サイラスに相談するのが一番なのかも……)  旦那様はお忙しいし、こういうことを相談するのに適任なのはやっぱりサイラスだ。……時間を、作ってもらおうか。 「……ねぇ、マリン」  そう思ったから、私はグラスに注がれたお水を一口飲んで、マリンに声をかけた。  すると、彼女は少し間をおいて「はい」と返事をくれる。……その声は、いつもよりも覇気がない。 (やっぱり、クレアとマリンにも心配ばっかりかけているのね……)  体調が悪いと、心の調子も悪くなってしまう。それを再認識しつつ、私はマリンの目をまっすぐに見つめた。  彼女の視線と、私の視線がばっちりと交わる。 「あのね、サイラスに相談があるの。……少し、時間を作ってもらえないか頼んでくれないかしら?」 「……サイラスさんに、ですか?」 「えぇ。……魔力関係のこと、だから」  そっと視線を下げてそう言えば、マリンは少し考えたのちに頷いてくれた。 「それは承知いたしました。ですが、旦那様も交えた方がいいかと、思います」 「……旦那様も?」 「はい。……旦那様も、ある程度は知識があると思われますので」  私の不安を和らげるかのように、マリンが笑ってそう言ってくれる。  ……そっか。 「じゃあ、旦那様にも時間を作ってもらわなくちゃ」  その笑みを見ていると、私も自然とそう言えた。……不思議なほどに口が自然とその言葉を紡いだのだ。
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