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(そうよ。旦那様、ここ最近ずっと私によそよそしいわ……!)
何か隠し事をしている、という言葉が正しいのかもしれない。
それほどまでに、旦那様は最近私に近づこうとしない。
(も、もしかして、浮気……とか?)
一瞬よぎったその不安に、私の顔からサーっと血の気が引いていく。
旦那様に限って、それはない。それはないと言い切れる……のだけれど。やっぱり、結婚して冷めるとか、そういうのはよく聞くものね。
「……そうでしょうか?」
私の言葉に、クレアはきょとんとした表情でそう返してくる。その目は、本気でそう思っているようであり、クレアは気が付いていないのだろう。……もしくは、私だけがそう思っている、とか。
「旦那様は、いつも通り奥様に接していると思いますが……」
「……ううん、私は、よそよそしいと思うのよ」
クレアの言葉に、ゆるゆると首を横に振りながらそう返す。
「なんていうか……その、隠し事、されているんじゃないかって」
今にも消えりそうなほど小さな声でそう言うと、クレアは眉をひそめた。……もしかして、不快にさせてしまった?
「き、気にすることじゃないのは、わかっているの。……ただ、浮気とかだったら、嫌だなぁって……」
毛布を抱きしめて、口元を隠しながらそう言う。言葉にすると、やっぱり傷ついてしまった。
私って、こんなにも弱い人間だっけ? そう思ってしまうほどに、今の私は打たれ弱い。体調のこともあるのだろうけれど、やっぱり……浮気は、ショックなのよ。
(イライジャ様のこともあるしね……)
一度、私は婚約者だった人に捨てられている。ということもあり、もしかしたら私は浮気に人一倍敏感なのかもしれない。
……なんて、思ったところで無駄なんだけれど。
「ま、まぁ、どうせ気のせいだろうけれど――」
クレアの顔を見つめて、そう弁解しようとしたときだった。クレアが、勢いよく私の手を握ってきた。
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