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「奥様!」
「は、はぃ?」
勢いよく私の手を握って、クレアが私のことを呼ぶ。……彼女のその目は、力強さを宿しているようだ。
「旦那様が浮気されているかもと、思われているのですね……?」
「う、うん。けれど、どうせ杞憂――」
「奥様をこんなに不安にさせる旦那様は、ぼこぼこにしましょう!」
……あの、お話が、飛躍していないかしら……?
「あ、あのね、これは私のただの想像で――」
「本当に浮気していたら、ぶっ飛ばします。えぇ、ぶっ飛ばします。……サイラスさんと、ロザリア様と一緒に」
……うん、その援軍は強力すぎる。
心の中で、そう思う。
「でも、奥様がこんなにも悩まれているのに、それに気が付かない旦那様も旦那様です! なので、私が今からぼこぼこにしてきます!」
胸を張って、クレアがそう言ってくれる。
……でもね、クレア。ぼこぼこにする必要はないのよ……。
(そもそも、クレアがぼこぼこに出来るわけないような……)
体格差もあるし、旦那様は男性で、クレアは女性。……力の差はあるし、丈夫さも違う。
そう思いつつ私がっクレアに視線を向ければ、彼女は今すぐにでも飛び出しそうな表情をしていた。
……多分、私が「行ってきて」と言えば、即飛び出していくだろう。……そんなこと、させないけれど。
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