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(旦那様のためにも、何かやりたいのよ……)
私の夫となったギルバート様。彼のために、私は頑張りたかった。
だって、私のことを救ってくださって、幸せにしてくださっているのだもの。私も少しは恩を返さないとならない。受けてばかりは、性に合わない。
「まぁまぁ、サイラスさん。奥様だってそれくらいわかっていらっしゃいますよ」
「……さようでございますか」
あまりにも私の顔が暗い所為なのか、クレアがそう声をかけていた。そうすれば、サイラスは少し眉を下げる。……悪いことを、してしまったわ。
「いえ、サイラスの言っていることもわかるのよ。……貴族の妻の一番の仕事は跡取りを産むことだものね」
もう、私はここに来た頃のお客様ではない。今の私はここの奥様なのだ。……いつまでものんきな考えではいられない。
「そういう意味ではございませんよ。このサイラス、奥様のことを大切な娘のように思っておりますから」
「……そうなの、ね」
「えぇ、クレアとマリン。それから奥様はサイラスの大切な娘のような存在でございます」
胸を張って、サイラスがそう言ってくれる。その言葉を聞いたためなのか、クレアとマリンが嬉しそうな声を上げていた。
「そうなりますと、私たちと奥様は姉妹ですよ!」
「そう、ね」
「とても嬉しいです! 奥様のような素晴らしい方と姉妹なんて……!」
きゃっきゃとはしゃぐ二人が、とても可愛らしい。思わず頬を緩ませていれば、サイラスも笑っていた。
……どうやら、私の気を緩ませてくれていたらしい。……感謝しかない。
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