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そう思いつつ、俺は執務室の窓から庭を見つめる。青々とした庭。それは、辺境で一番だと言われている。……それもこれも、シェリルが世話をしているからだ。
(植物たちも、シェリルがいなくなったら寂しいだろうな……)
シェリルは植物に愛されている。彼女が世話をすると、花々も生き生きとしているように思えると、庭師たちが語っていた。
(あいつからの返事も、まだ届いていないしな)
悪友の一人である北の辺境伯。奴から手紙の返事は、まだ届いていない。まぁ、遠いから仕方がないと言えば、仕方がないのだが。
(双方を守れる方法があるのならば。俺の何を犠牲にしても構わないんだけれどな)
俺の命でも、財でも、権力でも。それらを犠牲にすることで、シェリルとこの国の土。双方が守れるのならば、俺は――。
(なんて、そう思ったところで、シェリルは嫌がるんだろうな)
だが、そう思いなおした。シェリルは優しい。俺との生活に楽しさを見出してくれている。
……そんなシェリルを、一人にすることなんて出来ない。
「……サイラス」
「はい」
「シェリルが少しでも安心でき、体調が回復するように今まで以上に努めてくれ」
「承知しております」
サイラスにそう命じて、俺はただ目を瞑った。
本当に、なんというか……波乱万丈だな。
そう思ったら、苦笑さえこみあげてくる。
そして――この日々に、さらなる嵐がやってきたのは、もう少し後のことだった。
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