閑話2 最善の方法(ギルバート視点)

4/4
前へ
/208ページ
次へ
 そう思いつつ、俺は執務室の窓から庭を見つめる。青々とした庭。それは、辺境で一番だと言われている。……それもこれも、シェリルが世話をしているからだ。 (植物たちも、シェリルがいなくなったら寂しいだろうな……)  シェリルは植物に愛されている。彼女が世話をすると、花々も生き生きとしているように思えると、庭師たちが語っていた。 (あいつからの返事も、まだ届いていないしな)  悪友の一人である北の辺境伯。奴から手紙の返事は、まだ届いていない。まぁ、遠いから仕方がないと言えば、仕方がないのだが。 (双方を守れる方法があるのならば。俺の何を犠牲にしても構わないんだけれどな)  俺の命でも、財でも、権力でも。それらを犠牲にすることで、シェリルとこの国の土。双方が守れるのならば、俺は――。 (なんて、そう思ったところで、シェリルは嫌がるんだろうな)  だが、そう思いなおした。シェリルは優しい。俺との生活に楽しさを見出してくれている。  ……そんなシェリルを、一人にすることなんて出来ない。 「……サイラス」 「はい」 「シェリルが少しでも安心でき、体調が回復するように今まで以上に努めてくれ」 「承知しております」  サイラスにそう命じて、俺はただ目を瞑った。  本当に、なんというか……波乱万丈だな。  そう思ったら、苦笑さえこみあげてくる。  そして――この日々に、さらなる嵐がやってきたのは、もう少し後のことだった。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3206人が本棚に入れています
本棚に追加